a delicate cream cheese 「オリエント急行の殺人」

イメージ 1
 
 
「Murder on the Orient Express」 Agatha Christie
オリエント急行の殺人」 アガサ・クリスティー 中村能三(訳) 早川書房
 
 
 その昔。大学生の時の欧州旅行で、二回、寝台車を利用しました。
 オリエント急行のような優雅な鉄道の旅とは真逆の貧乏旅行でした。
 寝台車での初めての夜。
 星がとても綺麗で、これからここで夜を過ごすんだな、とわくわくしました。車内で他の国の乗客と言葉を交わし、もっと英語を話せれば良かったのに、と残念に思ったこともありました。
 この「オリエント急行の殺人」を読むと、あの時の光景が今でも鮮明に甦ります。
 
 特に、空きっ腹で困った思い出が。
 
 当時は「ユーロ」ではなく、各国独自の通貨でした。
 貧乏旅行のため、両替の手数料をケチったまでは良かったのですが、国境を越えて次の目的地に到着するのは翌日のお昼ごろ。私たちは「朝食」を調達するのを忘れていて、おかげで、到着までの数時間、グループ全員空腹でのた打ち回るハメになりました。
 もう一回通貨を両替し直して食堂車に駆け込むか…いや、それはかなり口惜しい…口惜しすぎる…。人間、一回くらいの絶食じゃ死なないよな…と励まし合い、目的地に着くまで席でじっとしていたのでした。
 
 自分の中では、あの日を境に食への執着が強まった…と思っています。
 
 
 
 英語の勉強に、と思って、原書を読んだりオーディオブックを聴いたりしているのですが、大事な箇所は頭に入らなくても、こういうものだけは妙に目に入ってくるんですよねえ…。
 
おいしいクリームチーズを食べている頃になってはじめて、ムシュー・ブークの注意が食事以外のことに向けられるようになった。思索的になるところまで食事の段階が進んだのだ。
 
 多分、コース料理のシメの方だよね?
 どういう形状のものを、どうやって食べたかはっきり書かれてはいないけど。
 「おいしいクリームチーズ(a delicate cream cheese)」だってえ??
 
 私の大好物なんですよクリームチーズ
 
 また、ドラゴミロフ公爵夫人は給仕に、
「すまないけど、わたしの車室にミネラルウォーターを一本と大きなグラスにオレンジ・ジュースを持ってきてください。今日の夕食はソースなしのチキンと ― それから、蒸し魚にしてください」
と注文しています。
 
 セレブの彼女のセレブなオーダーです。
 しかしこの私には絶対食べ足りない量。
 
 
 テレビでポワロを演じていたデビッド・スーシェが朗読するオーディオブックも買いましたが、以前Podcastでダウンロードした「 BBC Radio Collection 」版の方を聴く機会が多いです。
 効果音ありの芝居仕立てで、セリフもわかり易いので結構好きです。
 各国訛りの英語が聴けるのも、楽しい。
 
 お喋り好きなミセス・ハバードが、口にものを入れながらも話を止めない、と思われるシーンがありますが、クリスティーの原作に彼女が “もぐもぐしている様子” がダイレクトに描かれていなくても、「あ、きっとこうだよね」とすごく納得します。
  この「 BBC Radio Collection 」、他にもいくつか出ているのでそちらも聴いてみたいです。