ゴッホと日本趣味 「日本の花瓶に生けた薔薇とアネモネ」

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日本の花瓶に生けた薔薇とアネモネ
 
 
フランス、オーヴェールで、ゴッホは医師・ガッシェと親しく交流します。
 
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 医師ガッシェの肖像 
1890年 個人蔵
 
 
ゴッホの花 ジュディス・バンプス著 島田紀夫/中村みどり訳 西村書店
25 バラとアネモネ
 
「…風変わりな芸術愛好家であるにしても「とてもすばらしいピサロ」と「セザンヌの2点のみごとな花の絵」を所有しているこの学識ある人との交際を楽しんでいたようである。
彼は、ガッシェの家は「黒い骨董品でいっぱいだ。黒、黒、黒。さっき述べた印象派の絵だけが例外だ」(第635信、1890年5月)と伝えている。この雰囲気は明らかにゴッホに重くのしかかった。彼はこう繰り返している。
ガッシェの家は「骨董屋のように、必ずしもおもしろくないものでいっぱいだ。それでも次のような利点がある。花を活けるものや静物画に使えるものがいつも何かしらあるのだ」(第638信).
 
「…ここでは日本の花瓶に描かれた節くれだった枝に象徴され、快活な東洋的雰囲気をかもしだしている。この構図には、しっかりと角度をつけたテーブルの表面と奇妙に突きだしているバラの茎があるが、明らかに花瓶の形にならった構図である。一方、花の描き方は、日本の版画に描かれた、装飾的で様式化された形を思いおこさせる。」
 
 
 骨董好きな私としてはガッシェ先生のお宅に是非お邪魔してみたい。
 コレクション見たい!!
 高校や大学で西洋美術史を習った時は、ゴッホってあまり好きな画家ではありませんでしたが、彼の日本の浮世絵への傾倒や、芸術への情熱を知るにつれ、彼の絵を好きになっていきました。
 
 
 
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花魁(渓斎英泉を模して)
1887年 ゴッホ美術館
 
 
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Vincent's tracing of the courtesan figure
ゴッホによるトレース) 
ゴッホ美術館
 
「浮世絵の上に碁盤目状の線を描いた半透明の紙を載せ、輪郭を敷き写し、その後、より大きな碁盤目を引いたカンヴァス上に輪郭を拡大模写した。」(「もっと知りたいゴッホ 生涯と作品 圀府寺司著 東京美術
 
 
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「パリ・イリュストレ」 日本特集号 1886年
 
本当は左右が逆になっている花魁図。ゴッホはこの表紙を元にしたため、これと同じ「逆」に描いています。
 
 
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左 歌川広重「亀戸梅屋舗」(1857年 東京国立博物館
右 亀戸の梅(歌川広重による)(1887年 ゴッホ美術館)
 
 
 
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 左 歌川広重「名所江戸百景 『大はしあたけの夕立』」(1856年 東京国立博物館
右 日本趣味:雨の大橋(大はしあたけの夕立) (1887年 ゴッホ美術館) (wikipedia
 
 
 昔、「風情」というイミではゴッホの模写ってどーなんだ、と思ったこともあったけど、今観ると、これはこれでアリか、と。
 巨匠に対してちょっと上から目線に過ぎるでしょうか(汗)。
 でも、もうこの右の上下二枚の絵、「広重の模写」というより、「ゴッホの作品」という感じなのです。特に下の方は「雨」が好きか「橋」が好きかで、広重の絵が好きかゴッホの方が好きか分かれたりして。
 
 
 
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タンギー爺さん
1887–8年 ロダン美術館
 
 
 
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耳を切った自画像(頭に包帯をした自画像)
1889年1月 コートルード美術館
 
 
 上二枚の絵画の背景には浮世絵が描かれています。
 
 「タンギー爺さん」の背景には、
 ・雲龍打掛の花魁(渓斎英泉) 千葉市美術館
 ・三世岩井粂三郎の三浦屋高尾(歌川国貞) 山口県立萩美術館
 ・五十三次名所図会 四十五石薬師 義経さくら範頼の祠(歌川広重 山口県立萩美術館
 
 「自画像」の背景には今いちはっきりしないけど、富士山と思われる山が描かれた浮世絵が。
 
 
 一日本人として、日本に興味を持ってくれて嬉しい、と思います。
 そして、大好きな日本文化を好きになってくれて嬉しい、とも。
 私がゴッホの絵を好きなのは、その力強さや情熱はもちろん、彼の中の「日本趣味」に惹かれているからなのです。