19世紀に生きる女 ~『誰も知らない「名画」の見方』より

 『誰も知らない「名画」の見方』 高階秀爾(著) 小学館101ビジュアル新書
 
 
ベルト・モリゾ」の名前は聞いたことがない、という人でも、印象派の画家で有名なエドゥアール・マネの、ほら、あの絵だよ、あの絵の女性、…と言われれば、思いつく人もいる筈。 
 

『スミレの花束のベルト・モリゾ』 エドゥアール・マネ 1872年 オルセー美術館蔵

『スミレの花束のベルト・モリゾ』 エドゥアール・マネ 1872年 オルセー美術館

『バルコニー』 エドゥアール・マネ 1868-69年 オルセー美術館蔵

『バルコニー』 エドゥアール・マネ 1868-69年 オルセー美術館
 
このマネの絵のモデルは、画家ベルト・モリゾ(Berthe Morisot、1841年1月14日 - 1895年3月2日)です。
1874年、彼女はマネの弟ウージェーヌと結婚しました。  
 

ポスト印象派の画家ポール・ゴーガンやフィンセント・ファン・ゴッホが貧困と戦いながら創造の苦しみにもがいていた19世紀後半、美しいドレス姿で絵筆を振う女性がいた。ベルト・モリゾ(1841-95)である。姉とその娘を描いた代表作《ゆりかご》をはじめ、モリゾは家族や働く女性の姿など、身近な主題を深い情愛をもって描いた印象派の画家として知られている。(P172)

 

『スミレの花束のベルト・モリゾ』や『ゆりかご』はオルセー美術館で観たことがあります。
非常にもったいないことに、その時はあまりよく知りませんでした。
 
でも、この絵の作者がベルト・モリゾだと知ったとき、初めて彼女が身近に思えました。  

 
 

『食堂にて』 ベルト・モリゾ 1886年 ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵

『食堂にて』 ベルト・モリゾ 1886年 ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵

 

たとえば、《食堂にて》は、モリゾの娘ジュリーの子守をしていた女性バベットを描いた作品である。この作品でモリゾは、生活のためにいやいや働かなければならない労働者としてではなく、自らの意思で働くことを選んだ女性としてバベットを表現し、自立した女性の凛とした美しさを見事に描き出している。(P178)
 
 
こんなひと、近くにいるよね、と言えてしまうほど、ひどく身近に思えます。最近何処かで見掛けたことがあったような。
と言いますか、格好いい。この女性。19世紀と言えば、まだ様々な社会的規範に縛られている時代です。
この時代にモリゾが「職業画家」として起つということ。大変なことも多くあったに違いありません。
サロンに出品する度に、「印象派の典型的な作風のため酷評にさらされた」(P177)なんて、私だったらすぐへこんで、心が折れそう。
 
『ゆりかご』に代表されるような、家族的な情愛に満ちた絵もいいなと思いますが、この絵のように仕事を自ら選ぶ女性の絵も素敵だと思います。
まさに、これから来る新しい時代を予感させる力強さを感じます。
 

『ゆりかご』 ベルト・モリゾ 1872年 オルセー美術館蔵

『ゆりかご』 ベルト・モリゾ 1872年 オルセー美術館

『化粧』 ベルト・モリゾ 1875年から1880年の間 シカゴ美術館蔵

『化粧』 ベルト・モリゾ 1875年から1880年の間 シカゴ美術館蔵
 
 
 
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