黄色いチューリップのブローチ

 
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 イヴリンはアガサの上着の衿に目を投げると、しげしげとそれを眺めた。「あなた、不幸な恋をしたことがおありになるの」
 アガサはびっくりした。
「いつもそのブローチをつけているんですもの。黄色いチューリップね。望みなき愛って意味があるのよ」
 アガサは横目で自分の衿を見た。「そんなバカなこと、イブリン。わたしの母がくれたのよ。もともと父から母へのプレゼントだったの。あのふたりの結婚は完璧だったわ」
「それは素敵ね」イヴリンはいった。「ともかく、わたしも花言葉なんて信じるのはどうかと思うけど」
 
 
両親の結婚は完璧だったけれど、自身は夫に裏切られ、深く傷ついているアガサの衿に留まる、黄色いチューリップのブローチ。

昔、年上の、ラファエル前派好き・クリスティ好きの友人から薦められて読んだ本です。
キャサリン・タイナン著「アガサ・愛の失踪事件」(文春文庫、夏樹静子訳)。
今引っくり返してみると
バーコード無し。
いや、そこじゃなくて。
 
ミステリーの女王・アガサ・クリスティが失踪した、実際の事件を題材に書かれた小説です。
真相は闇の中。彼女がお墓の中まで持っていってしまいました。
でも、ホントはこうだったんじゃない?と思えてなりません。それほどに、この本はよく書けていると思うのです。
 
映画も観ました。
20年代アールデコの時代の空気が伝わってくる作品でした。
名作だと思うのに、これってDVD化されてない?また観てみたいと思っているんだけど。
出てないとしたら、海外のAmazonで買うしかないのかな。

物語の最後、アガサはこのブローチをプラットフォームに落とします。不幸な恋、結婚との決別のように。
それを駆けよって拾うイブリン。
そして彼女が手渡すのは…。

この原作の原書もぜひ読んでみたいです。
 
 
 
アガサ・クリスティ」という名の薔薇はピンク色をしています。
 
下の写真はそれとは違いますが、現在満開に近く、初夏を感じさせてくれます。
 
きれーだなー。
 
 
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